万年筆のメンテナンス&ケア

ペンのお医者さん登場!ペンを元気に保とう〜BeforeAfter!

きちんとお手入れすれば、万年筆は一生モノです。実際、1920〜30年代のヴィンテージペンが今でも現役で使われているケースは珍しくありません。万年筆のメンテナンスは難しくなく、特別な技術や高価な道具も不要。いくつかの習慣を身につけるだけで、何十年も快適に使い続けられます。

洗浄スケジュール早見表インク交換時必ず洗浄月1回日常使いのペン保管前徹底洗浄+乾燥

定期的な洗浄

定期的な洗浄は、ペン芯にインクの残りカスが溜まるのを防ぎます。蓄積するとインクの流れが悪くなり、飛びやインクの出にくさの原因になります。基本的な洗浄方法は以下の通りです。

洗浄の頻度

  • インク交換のたびに: 違うインクに入れ替えるときは必ず洗浄しましょう。ペンの中でインクが混ざると、化学反応や詰まりの原因になることがあります。
  • 4〜6週間ごと: 同じインクを使い続けている場合でも、少しずつ溜まる汚れを定期的に洗い流しましょう。
  • 長期保管前: 2週間以上使わない場合は、しまう前にしっかり洗浄しておきましょう。

基本的な洗浄手順

  1. カートリッジまたはコンバーターをペンから取り外します。
  2. ペン先とグリップ部分を冷たい流水にあてます(お湯はペンの素材を傷めることがあるので避けましょう)。
  3. コンバーターがある場合は、きれいな水を吸い上げては排出する動作を繰り返します。インクが通るのと同じ経路に水が流れるので効果的です。
  4. 水が完全に透明になるまで繰り返します。高彩度のインクだと何度も繰り返す必要があるかもしれません。
  5. 余分な水気を軽く振り落とし、ペーパータオルでペン先を拭いたら、タオルの上にペン先を下にして数時間(または一晩)自然乾燥させます。
1取り外すカートリッジ2水で洗浄お湯はNG3透明になるまで繰り返す4水気を切る余分な水分5自然乾燥ペン先を下に

基本的な洗浄の5ステップ

ヒント: カートリッジ式で洗浄用のコンバーターがない場合は、ゴム製のスポイトでグリップ部分に水を通すと便利です。薬局で数百円で手に入ります。

徹底洗浄

*詰まった*洗浄!シャー!助けに来たよ!

基本的な洗浄だけでは落としきれないこともあります。シマーインクや高彩度インクを使った後、あるいはインクが乾いたまま長期間放置されたペンでは、より念入りな洗浄が必要です。

ペン洗浄液

市販のペン洗浄液(多くの万年筆販売店で購入可能)は、ペンの素材を傷めずに頑固なインク汚れを溶かすマイルドな洗浄剤です。自作も可能で、コップ一杯の水に食器用洗剤を少量と、家庭用アンモニアをほんの少し加えます(水とアンモニアの比率は約10:1)。洗剤が表面張力を下げ、アンモニアが乾いたインクを溶かしてくれます。

使い方は、洗浄液をペンに充填して15〜30分浸け置きするだけ。その後、洗浄液が完全になくなるまできれいな水でしっかりすすぎましょう。

超音波洗浄

超音波洗浄器は高周波の振動で、手の届かない場所にこびりついた汚れを落とします。グリップ部分を分解し、ペン先とペン芯を水と一緒に超音波洗浄器に入れて2〜3分動かします。ペン芯に沈殿したシマーインクのラメ粒子を取り除くのに特に効果的です。

注意: ペン全体を超音波洗浄器に入れてはいけません。必ずペン先とペン芯の部分だけにしてください。振動で素材が傷んだり、軸の塗装が剥がれたり、セルロイド製の軸にヒビが入ることがあります。装飾のあるペンは手洗いの方が安全です。

インクの入れ替え

インクの色を入れ替えるのは万年筆の大きな楽しみですが、切り替えの際にはしっかり洗浄することが大切です。手順は以下の通りです。

  1. 残っているインクを出し切ります。コンバーターの場合はボトルに戻すか、シンクに流しましょう。
  2. 水が透明になるまで冷水で洗浄します(上記の基本洗浄手順を参考にしてください)。
  3. 数時間〜一晩ほど乾燥させます。ペン芯に多少のインクが残るのは正常で、次の色に大きな影響はありません。ただし、赤からライトブルーのように色の差が大きい場合は、念入りに洗浄しておくと安心です。
  4. 新しいインクを入れたら、試し書き用の紙に数行書いてみましょう。最初の数行は残っていた水分と混ざり、前のインクの色がうっすら見えることがあります。

ヒント: よく使う色系統ごとに専用のペンを決めておくと便利です。多くの愛好家が「このペンにはこのインク」と決めて使い分けています。徹底洗浄の手間がぐっと減りますよ。

ペン先のケア

ペン先は万年筆の中で最もデリケートで、書き心地を左右する最も大事なパーツです。日頃のちょっとした気遣いが、長く快適に使えるかどうかの大きな差になります。

ペン先の構造(拡大図)左のタイン右のタインスリット(インク溝)ハート穴ペンポイント

ペン先の主要部分 — 丁寧に扱いましょう

ダメージを防ぐ

やるべきこと
  • 軽い自然な筆圧で書く
  • 使わない時はキャップをする
  • 持ち運びはペン先を上に
  • 40〜55度の角度で持つ
やってはいけないこと
  • ボールペンのように強く押す
  • キャップなしで落とす
  • ボールペンユーザーに貸す
  • ペン先を裏返して書く
正しい筆記角度45°立てすぎ寝かせすぎ適正(40〜55°)NG
  • 強く押さないこと。 万年筆はペン自体の重みで書けるように設計されています。力を入れるとタイン(ペン先の二股部分)が開いたりずれたりして、インクの流れが悪くなります。
  • 書かないときは必ずキャップをすること。 キャップをしていない状態で落とすと、ペン先から着地して先端が曲がったり、取り返しのつかないダメージを受けることがあります。
  • 万年筆に慣れていない人にはペンを貸さないこと。 ボールペンに慣れている人は力を入れて書く癖があり、角度も急になりがちなので、ペン先を傷めてしまうことがあります。
  • 持ち運ぶときはペン先を上にすること。 こうすることで、キャップ内にインクが溜まるのを防ぎ、開けたときにインクがドッと出てくる「バーピング」を避けられます。

ペン先調整師に相談すべきとき

ペン先調整師(ニブマイスター)は、ペン先の調整・修理・カスタマイズを専門とする職人です。以下のような場合は相談を検討しましょう。

  • 特定の方向でだけ引っかかる(タインのずれが疑われる場合)
  • 書き味の異なるカスタム研ぎ(スタブ、イタリック、アーキテクトなど)を試したい場合
  • 強い筆圧でタインが開いてしまった(スプラング)場合
  • あらゆるトラブルシューティングを試してもうまく書けない場合

保管方法

日常の持ち運び

毎日持ち歩くペンには、ペンスリーブや1本用ペンケースがあると傷や衝撃から守れます。カバンに入れるときは専用のポケットやペンループを使いましょう。そのまま入れると他の物とぶつかって傷がつく原因に。キャップは必ず閉め、できるだけペン先を上向きにして持ち運びましょう。

短期保管(数日〜数週間)

数日間使わないだけなら、キャップをしっかり閉めておけば十分です。ネジ式キャップなら数週間はインクの乾燥を防げます。嵌合式(はめ込み式)キャップは乾きやすいこともあるので、週に一度くらい様子を見ましょう。直射日光や極端な温度は避け、ペンケースやスタンドに保管してください。

長期保管(数ヶ月以上)

長期間しまっておく場合は、必ずペンを徹底的に洗浄し、完全に乾かしてからにしましょう。インクを入れたまま何ヶ月も放置すると、乾いたインクがこびりついて落としにくくなり、コンバーターや軸に消えないシミがつくこともあります。洗浄・乾燥済みのペンは、涼しく乾燥した場所でペンケースやポーチに入れて保管してください。

ヒント: シリカゲル(家電などに入っている乾燥剤の小袋)は、湿度の高い地域での長期保管に重宝します。ペンケースに一つ入れておくだけで湿気による劣化を防げます。

よくあるトラブルの対処法

トラブルシューティング早見表出にくいキャップを外しても書けないキャップの密閉確認飛び線が途切れる洗浄+インク交換レールロード1本の線が2本線にゆっくり書く+ウェットなインク乾燥固着ペン芯でインクが固まった一晩浸け置き

インクが出にくい(ハードスタート)

「ハードスタート」とは、キャップを外してもすぐに書き出せない状態のこと。走り書きをしたりしばらく待たないとインクが出てきません。多くの場合、ペン先がわずかに乾いているのが原因です。キャップの密閉が甘い、環境が乾燥している、長期間使っていなかったなどが考えられます。対策としては、キャップがしっかり閉まるか確認する、ペン先を上にして保管する、フローの良い(ウェットな)インクに替えるなどが有効です。それでも改善しない場合は、タインの隙間が狭すぎる可能性があるので、ペン先調整師に相談してみましょう。

飛び(スキッピング)

スキッピングとは、書いている途中でインクが途切れ途切れになり、線に隙間ができる現象です。原因はさまざまで、ペン芯の汚れ、ペンに合わないドライなインク、ベビーズボトム(研磨されすぎたペン先がインクをはじく状態)、タインのずれなどが考えられます。まずは洗浄して別のインクを試してみましょう。それでも改善しなければ、プロによる調整が必要かもしれません。

レールロード

レールロードとは、1本の線のはずが2本の細い平行線になってしまう現象です。線路に似ていることからこの名前がつきました。筆記速度にインクの供給が追いつかず、スリット(ペン先の切り割り)が一時的にインク切れを起こすことで発生します。ドライなインク、速い筆記、フレックスニブで起こりやすい現象です。対策としては、ゆっくり書く、ウェットなインクに替える、ペン芯の溝が詰まっていないか確認するなどが有効です。

乾燥固着

インクが入ったまま長期間放置されたペンは、ペン芯でインクが乾いて固まっていることがあります。無理に動かしてはいけません。グリップ部分を冷水に数時間(または一晩)浸けましょう。なかなか落ちない場合はペン洗浄液を使ってみてください。乾いたインクのほとんどは、時間をかければ溶けます。本当にガチガチに固まっている場合は、超音波洗浄器が効果的です。

バーピング(インクの突然放出)

バーピングとは、キャップを外したときや温度が変わったとき(寒い部屋から暖かい部屋に移動した場合など)に、インクが突然ドッと出てくる現象です。インクタンク内の空気が膨張してインクを押し出すことで起こります。ピストン式やアイドロッパー式など、タンク内の空気が多いペンで起こりやすいのが特徴です。インクをなるべく満タンに保つと空気量が減り、バーピングを抑えられます。直射日光や高温の車内にペンを放置しないようにしましょう。

覚えておきましょう: 万年筆のトラブルのほとんどには簡単な解決策があります。ペン本体の故障を疑う前に、まず (1) ペンを徹底洗浄する、(2) 別のインクを試す、(3) 別の紙で試す、の3つを試してみてください。大半の問題はこれで解決します。

さあ、インクを入れよう

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