インクの色の選び方
万年筆の醍醐味のひとつが、豊富なインクカラーの世界。定番のブルーから鮮やかなティール、深みのあるパープル、温かみのあるブラウンまで、何千色ものインクがあり、目移りしてしまうのも無理はありません。このガイドでは、自分の好みや用途に合ったインクを見つけるための考え方を紹介します。
筆記における色の役割
色は単なる飾りではなく、筆記において実用的な役割を持っています。色をうまく使い分ければ、ノートの整理(トピックや優先度ごとの色分け)、手紙のトーン作り、そして書くこと自体をもっと楽しくすることができます。
実用面では、白い紙とのコントラストが強い暗めのインクのほうが読みやすく、スキャンにも向いています。一方、ちょっと変わった色を使えば、書くモチベーションが上がり、自分だけのページという愛着が生まれます。正解はひとつではありません。ペンを手に取りたくなる色こそが、あなたにとってのベストインクです。
インク愛好家のための色彩理論入門
アーティストでなくても、色の基本を少し知っておくとインク選びがぐっと楽しくなります。
色相環:右が暖色系、左が寒色系
暖色と寒色
暖色(赤、オレンジ、黄色、暖かみのあるブラウン)は、エネルギッシュで親しみやすい印象。日記や創作、プライベートな手紙によく合います。寒色(ブルー、グリーン、パープル、クールなグレー)は、落ち着いた知的な印象。ノートやビジネス文書、フォーマルな筆記に向いています。
補色
色相環の対角にある色同士(ブルーとオレンジ、パープルと黄色など)は、並べると強いコントラストが生まれます。色分けに活用すると、それぞれの色がくっきり際立ちます。たとえば普段使いのインクが深いブルーなら、見出しや注釈にオレンジやウォームアンバーを使うと効果的なアクセントになります。
類似色
色相環で隣り合う色(ブルー、ティール、グリーンなど)は、調和のとれたまとまりのある印象になります。統一感のある美しいページにしたい方は、同じカラーファミリーからインクを選ぶと、自然にまとまった仕上がりになります。
人気のインクカラーファミリー
各カラーファミリーには明るい色から暗い色まで幅広い選択肢があります
ブルー系
ブルーは世界で最も人気のある万年筆インクの色です。きちんとした印象で読みやすく、どんな場面でも使えるのが理由でしょう。選べるブルーの幅は驚くほど広く、淡いスカイブルー(Pilot Iroshizuku Ama-iro)から鮮やかなミディアムブルー(Waterman Serenity Blue)、ほぼ黒に近い深いネイビー(Sailor Sei-boku)まで揃っています。ブルーブラックはピュアブルーの洗練された代替で、フォーマルさにちょっとした個性を添えてくれます。
ブラック系
黒インクは、フォーマルな書類や署名、とにかく読みやすさ重視の方にとっての定番です。ひと口に黒と言っても実はさまざまで、暖かみのあるアンダートーン(細い線だとやや茶色やバーガンディがかって見える)のものもあれば、クールでニュートラルなものも。Pilot Iroshizuku Take-sumiは素直で扱いやすいピュアブラック。Aurora Blackは深く豊かな彩度に定評があります。Platinum Carbon Blackは顔料系で完全防水です。
レッド・バーガンディ系
赤インクは採点や注釈、強調のマーキングに人気です。明るい赤は長文だと読みづらいこともありますが、深みのある赤やバーガンディなら上品な日常使いの色になります。Diamine Oxbloodは根強い人気を誇り、ブラウンがかったリッチなダークレッドがヴィンテージ感を漂わせます。Pilot Iroshizuku Momojiはより明るくオーソドックスな赤です。
グリーン系
グリーンインクは、深いフォレストグリーンから鮮やかなエメラルド、オリーブやセージまで幅広い色味が揃っています。日常使いでは少数派ですが、だからこそ個性が光ります。Sailor Yama-doriは美しいマゼンタシーンが出るティールグリーンとして人気。Rohrer & Klingner Alt-Goldgrunは古い写本を思わせる、暖かみのある金色がかったグリーンです。Diamine Sherwood Greenは、明らかにブルーとは違いつつフォーマルにも使える、豊かなダークグリーンです。
パープル・バイオレット系
パープルインクは、華やかさと読みやすさを両立できる面白い色域です。Diamine Imperial Purpleは堂々としたリッチなパープル。Pilot Iroshizuku Murasaki-shikibuはやわらかく上品なバイオレットです。もう少し落ち着いた色がほしければ、Robert Oster Midnight Sapphireがブルーとパープルの間を美しくつないでくれます。
ブラウン・オレンジ・イエロー系
アースカラーは万年筆の世界ではもっと注目されてもいい色域です。Diamine Chocolate BrownやRohrer & Klingner Sepiaなどのブラウンインクは、暖かみがあって読みやすく、文字にクラシカルな雰囲気を添えてくれます。Pilot Iroshizuku Yu-yakeのようなオレンジは鮮やかで気分が上がる色。イエローインクも存在しますが、普段使いには明るすぎるため、ハイライトやアクセントとして使うのが向いています。
用途に合わせたインク選び
オフィス
ブルー、ブルーブラック、ブラック
日記
好きな色ならなんでも
手紙
味わい深いインク
アート
濃淡の出るインク、特殊インク
オフィス・ビジネス
ブルー、ブルーブラック、ブラックが鉄板です。ビジネス文書にも署名にも、どんな場面でも安心して使えます。少しだけ個性を出したいなら、ダークティールやネイビーがおすすめ。フォーマルな印象を保ちつつ、ピュアブルーより一味違った趣があります。安いコピー用紙でもにじまない、扱いやすく速乾性のあるインクを選びましょう。
日記・プライベートの筆記
日記なら何でもあり。好きな色を思いきり楽しみましょう。日記を書く方の多くはインクを頻繁に入れ替え、気分や季節、話題に合わせて色を変えています。シーンインクやシマーインクを使えば、日々の筆記がちょっと特別なものになります。
手紙・文通
手書きの手紙を送ること自体がすでに特別なこと。だからこそ、インク選びもその体験の一部です。深いバーガンディ、フォレストグリーン、彩度の高いブルーなど、味わいのあるインクが手紙にはよく映えます。封筒の宛名書きには、雨で流れないよう耐水性のあるインクも検討してみてください。
アート・イラスト
アーティストがインクに求めるのは、濃淡の変化(シェーディング)、シーン、水を使ったウォッシュへの反応性といった面白い特性です。万年筆インクの多くはスケッチにも美しく使え、水で薄めたり混ぜたりすれば水彩画のような表現も楽しめます。
ヒント: 色に迷ったら、ボトルを買う前にまずサンプルを試してみましょう。多くの販売店で2〜3mlのインクサンプルが手に入り、数ページ分は十分書けます。合わないボトルを買ってしまうよりずっとお財布にやさしいです。
InkPaletteがお手伝いできること
InkPaletteは、頭の中にあるイメージの色と、実在するインクとの架け橋です。スウォッチやレビューを延々と探し回る代わりに、こんなことができます。
- カラーホイールで好きな色を選ぶ、またはHEXコードで直接指定
- 画像をアップロードして、写真の中から色をピックアップ(夕焼け、花、布地など何でもOK)
- 選んだ色に近い実在の万年筆インクを一覧で表示
- 候補を並べて見比べて、ベストな1本を見つける
自然の中で見かけた色を再現したいときも、プロジェクト用に特定の色合いを探しているときも、InkPaletteならすばやく直感的に見つけられます。
インクコレクションを築く
気がつくと一生かけても使いきれないほどのインクが手元に……。多くの万年筆愛好家が身に覚えのあることでしょう。ここでは、実用的で満足度の高いコレクションを育てるためのヒントを紹介します。
まずは必需品から
まずは使い勝手のいいインクを3〜4色揃えましょう。普段使いに頼れるブルーかブルーブラック、フォーマル用のブラック、そして純粋に楽しめる「遊び」の色を1〜2色。これだけあればたいていの場面はカバーでき、迷いも少なくなります。
計画的に増やす
新しいインクを買う前に、「似たような色、もう持ってない?」と立ち止まってみましょう。ダークブルーが3本あるなら、4本目で得られる感動は正直少ないかもしれません。それよりも、まだ手を出していないカラーファミリーを冒険してみてください。寒色系ばかりなら、暖かみのあるブラウンやリッチなバーガンディを。コレクションの豊かさは、似た色を20本集めることではなく、色の幅を広げることから生まれます。
サンプルを活用する
インクサンプルは最強の味方です。30〜80mlのボトルを買う前に、色合い、書き味、手持ちのペンや紙との相性をじっくり確かめられます。サンプルを扱っている万年筆ショップは多いですし、愛好家同士でサンプルを交換し合うのもこの趣味ならではの楽しみです。
ヒント: インクログをつけてみましょう。インク名、使ったペンとペン先、紙、そのときの感想を記録しておくと、ボトル購入を検討するときに「あのインク、どうだったっけ?」と振り返れてとても便利です。
理想の色を見つけよう
InkPaletteで色から万年筆インクを探してみましょう。好きな色を選ぶ、画像をアップロードする、HEXコードを入力する。数十ブランドの中からぴったりのインクが見つかります。
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